「在宅で稼げる」「未経験でもOK」そんなSNS運用代行の魅力的な謳い文句を目にしたことはありませんか?実際のところ、SNSが日常生活に欠かせないものになった今、この仕事への注目度は確実に高まっています。でも、その裏側にある現実はどうなのでしょうか。
今回は、SNS運用代行というお仕事について、甘い幻想を抱かずに済むよう、リアルな実情をお伝えしていきたいと思います。華やかに見える業界の実態から、本当に稼げるようになるための具体的な方法まで、包み隠さずご紹介します。
SNS運用代行って実際どんな仕事?思っているより奥が深い世界
SNS運用代行とは、企業や個人に代わってSNSアカウントを管理・運営する仕事です。「投稿するだけでしょ?」と思われがちですが、実はその業務内容は想像以上に幅広く、奥深いものです。
基本的な業務内容
主な仕事は以下のような内容になります。まず、クライアントとのアカウント方針の打ち合わせから始まり、投稿内容のリサーチ、コンテンツ作成、実際の投稿作業を行います。さらに、フォロワーとの交流やコメント管理、運用状況のデータ分析と報告、そして改善のための施策提案まで含まれることが一般的です。
SNS運用代行には大きく2つのタイプがあります。ひとつは「ゴースト型」と呼ばれるもので、投稿作成や「いいね」周りといった作業を代行するタイプです。未経験者でも始めやすいのが特徴ですが、その分単価は比較的低めに設定されています。
もうひとつは「プロデュース型」で、投稿のネタ作りや企画、アカウント全体の運用・改善といった広範囲を管理するタイプです。より専門的な知識が求められる分、高い需要と単価が見込めます。
市場の現状と将来性
ソーシャルメディアマーケティング市場は、2024年時点で1兆2,038億円に達し、前年比113%の成長を見せています。2029年には約1.8倍の2兆1,313億円に達すると予測されており、この数字を見るだけでも、この業界の勢いの凄さが伝わってきます。
特に注目すべきは、「SNSアカウント運用支援」が283億円で全体の2.4%を占めているという点です。一見小さく見える数字かもしれませんが、この分野だけで283億円もの市場があるというのは驚異的です。
企業がSNSをビジネスに活用する割合は40.8%に上るものの、社内にSNS運用ができる人材が不足している企業が多いのが現状です。このギャップこそが、SNS運用代行の需要を支えている大きな要因といえるでしょう。
「未経験でも月10万円」の現実度をチェック
さて、気になるのは収入面です。「未経験でも月10万円稼げる」という話をよく耳にしますが、これは本当なのでしょうか?
料金相場の実態
初心者や経験が少ないフリーランスは、月額5万円~10万円程度の案件からスタートすることが多いというのが現実です。つまり、月10万円というのは決して不可能な数字ではありませんが、最初からその金額を稼げるとは限りません。
個人・フリーランスの料金相場を詳しく見てみると、月額2万円〜10万円が目安とされています。業務内容別では以下のような分かれ方になります:
- 投稿代行のみ:月3,000円〜10,000円程度
- 投稿+運用分析:月2万円〜5万円(個人向け)
- 戦略設計+運用代行:月10万円〜30万円
- 広告運用込み:月30万円以上
この数字を見ると、確かに月10万円は現実的な目標ですが、それには相応のスキルと付加価値の提供が必要だということがわかります。
現実的な成長プロセス
多くの成功例を見ると、以下のようなステップを踏んでいることが多いです。まず最初は低単価の案件(月2〜5万円程度)から始めて実績を積み、スキルアップと並行して徐々に単価を上げていく。そして半年〜1年程度で月10万円以上の安定収入を目指すというのが現実的なプロセスです。
重要なのは、最初から高収入を期待せず、長期的な視点で取り組むことです。SNS運用代行は、継続的に学び続け、実績を積み重ねることで、確実に収入を増やせる仕事だといえるでしょう。
必要なスキルと学習方法 ~ 思っているより多岐にわたる
SNS運用代行で成功するためには、実は多岐にわたるスキルが必要です。「SNSを普段使っているから大丈夫」と思っている方は、少し考えを改めた方が良いかもしれません。
核となる5つのスキル
成功するために必要な主要スキルは以下の5つです。
1. SNSプラットフォームの理解
各SNSの特性やアルゴリズムを深く理解することが重要です。Instagramはビジュアル重視、Xは拡散力、TikTokは短尺動画といった特性を知り、それぞれに最適化した運用ができるかが鍵となります。
2. コンテンツ制作スキル
魅力的な画像や動画、キャッチーなテキストを作成する能力が求められます。CanvaやCapCutなどのツールを活用できると、クライアントにとって大きな価値となります。
3. マーケティング知識
SNSはマーケティング戦略の一環として活用されるため、ターゲット分析、ペルソナ設定、KPI設定などの基礎知識が不可欠です。
4. データ分析能力
投稿のエンゲージメント率やフォロワーの属性を分析し、効果測定や改善提案ができるスキルが必要です。各SNSのインサイト機能やGoogleアナリティクスなどを活用します。
5. コミュニケーション能力
クライアントとの打ち合わせや、フォロワーからのコメント対応など、円滑なコミュニケーションを通じて信頼関係を築く力も重要です。
効果的な学習方法
これらのスキルを習得する方法としては、独学、オンラインスクール、実践経験の3つが主要な選択肢となります。
独学では、書籍やインターネット上の無料サイト、YouTubeなどで基礎知識を学ぶことができます。自身のSNSアカウントを積極的に運用し、分析機能を活用しながら実践的にスキルを磨くのも効果的です。
効率的かつ体系的に学びたい未経験者には、専門スクールの受講もおすすめです。SNS運用代行に必要なマーケティングや動画編集、ライティングなどの周辺スキルをまとめて学べるコースも多くあります。
そして何より重要なのは実践経験です。最初は低単価の案件や友人・知人のSNSを無料で代行することで、実務経験を積むことが何よりも重要です。
案件獲得の現実:競争は激しいが方法は多様
SNS運用代行の案件獲得は、正直なところ競争が激しい状況です。在宅でできる・未経験から始められるなどの理由から、SNS運用代行の副業を始める人は増加してきています。しかし、案件を得る方法は多様で、工夫次第で未経験からでも仕事を獲得することは十分可能です。
主要な案件獲得方法
クラウドソーシングサイトの活用
「クラウドワークス」「ランサーズ」「ココナラ」などが代表的です。未経験者でも応募可能な案件が多数掲載されています。最初は報酬が低くても、実績を積むことを目的に積極的に応募しましょう。
自身のSNSアカウントを活用した集客
自分自身のSNSアカウントを「SNS運用代行のポートフォリオ」として活用する方法です。日々の投稿でSNS運用のノウハウや成功事例を発信し、「SNS運用代行をやっています」と明確にアピールすることで、興味を持った企業や個人から直接問い合わせが来る可能性があります。
知人・友人からの紹介
周囲の友人や知人にSNS運用代行サービスを始めたことを積極的に知らせてみましょう。信頼関係を基盤とした紹介案件は、安心して仕事に取り組めるだけでなく、口コミでさらに広がる可能性もあります。
直接企業への提案
特定の業界や、SNS運用に課題を抱えていると思われる中小企業に直接アプローチするのも有効です。地元の飲食店や美容室など、SNSを活用しきれていない企業を見つけて具体的な提案をしてみましょう。
フリーランス向けマッチングサービス
WorkshipやITプロパートナーズなどのサービスでは、SNS運用代行の案件も豊富に扱っており、週2〜3日の稼働で高単価なフルリモート案件も見つかることがあります。
ポートフォリオの重要性
案件獲得で最も重要なのがポートフォリオです。未経験の場合、まずは自身のSNSアカウントを運用してフォロワーを増やしたり、エンゲージメントを高めたりすることで、SNS運用のスキルを証明できます。
また、友人や知人のSNSアカウントを無料で代行し、その成果を実績としてまとめるのも有効です。さらに、「もし○○業界のSNSを運用するなら?」といった架空のケーススタディを作成し、運用戦略や投稿案を提案する資料を作ることも、実力をアピールする手段となります。
収益アップの戦略:単価を上げる具体的な方法
月10万円以上を安定して稼ぐためには、単価を上げる工夫と継続的な案件獲得が重要です。以下のような戦略が効果的です。
付加価値の提供
単なる投稿代行に留まらず、SNS広告運用、SEO対策、ブログ運営サポートなど、クライアントのニーズに応じた付加価値サービスを提供することで、単価を上げることができます。
成功事例の蓄積
過去の運用実績や具体的な成果(フォロワー増加数、エンゲージメント率向上など)をポートフォリオにまとめ、積極的にアピールしましょう。数字で示すことで説得力が増し、高単価案件を獲得しやすくなります。
長期契約の提案
単発の案件だけでなく、6ヶ月〜1年といった長期契約を提案することで、安定した収益を確保できます。クライアントとの信頼関係を築き、継続的に価値を提供することが重要です。
専門分野への特化
全てのSNSを網羅するのではなく、InstagramやTikTokなど特定のSNSに絞って専門知識を深めることで、その分野での第一人者としての価値を高められます。
効率化と時間管理
予約投稿ツール(Meta Business SuiteやHootsuiteなど)を活用したり、Google Workspaceのツールに慣れてクライアントとのやり取りを円滑にしたりすることで、業務効率を高め、より多くの案件をこなせるようになります。
注意すべきリスクと落とし穴
SNS運用代行を始める際には、いくつかの重要な注意点があります。これらを事前に理解しておくことで、トラブルを回避し、長期的に成功することができます。
契約関連のリスク
仕事を開始する前に、業務範囲、報酬、納期、報告方法などをクライアントと綿密に打ち合わせ、必ず書面で合意しましょう。曖昧な契約は後々のトラブルの原因となります。
特に、どこまでが「運用代行」の範囲で、どこからが「コンサルティング」や「広告運用」などの追加業務になるのかを明確にしておくことが重要です。
炎上リスクへの配慮
SNS運用には、炎上というリスクが常に伴います。投稿内容が特定のユーザー層に配慮を欠いた表現になっていないか、誤解を招く内容ではないかなど、二重、三重のチェック体制を敷くことが重要です。
継続的な学習の必要性
SNSのアルゴリズムや機能、流行は日々変化しています。2025年1月、Instagramのサムネイル表示が正方形から縦型に変わったアカウントが多く見られるようになりましたといったように、プラットフォームの仕様変更は頻繁に起こります。
常に最新の情報をチェックし、最適な運用戦略を立てられるように学び続けることが不可欠です。
収入の不安定性
副業としてSNS運用代行を行うデメリットとして、収入が安定するまでに時間がかかる点が挙げられます。また、プロジェクト単位の仕事が中心となるため、案件が途切れると収入も途絶えてしまうリスクがあります。
このため、複数のクライアントとの関係を築き、収入源を分散させることが重要です。
2025年のSNS運用代行トレンド
SNS運用代行の世界も、時代と共に変化し続けています。2025年の注目すべきトレンドをいくつかご紹介します。
AI活用の加速
2025年はAIの活用が加速すると考えられます。XではAIアシスタント「Grok」が搭載されたほか、InstagramやFacebookを運営するMetaも広告機能でAIの活用を強化しています。
企業や自治体のSNS運用においても、コンテンツ制作やカスタマー対応、分析にAIを活用する動きが活発になりそうです。
アルゴリズムの変化への対応
各SNSのアルゴリズムの特徴として、アカウント同士の親密度や投稿への関心度が重要視されるようになっています。すでに「フォロワーがたくさんいれば投稿もそれだけ多くの人に見てもらえる」というシンプルな構図ではなくなっています。
このため、単純にフォロワー数を増やすだけでなく、質の高いエンゲージメントを築くことがより重要になってきています。
縦型ショート動画の需要拡大
インフルエンサーマーケティングにおける縦型ショート動画の需要はますます高まっており、2024年には246億円、前年比137%となることが見込まれます。
この流れは今後も続くと予想され、動画制作スキルを持つSNS運用代行者の価値がさらに高まることでしょう。
まとめ
SNS運用代行は確かに魅力的な仕事ですが、「簡単に稼げる」という甘い考えは禁物です。しかし、正しい知識と戦略を持って取り組めば、未経験からでも十分に成功できる分野でもあります。
重要なのは、最初から高収入を期待せず、段階的にスキルアップを図りながら実績を積み重ねることです。市場規模は拡大を続けており、需要は今後も安定して見込めます。
まずは自分のSNSアカウントを真剣に運用し、小さな実績を作ることから始めてみてください。そして、低単価の案件からでも良いので実際に仕事を受け、経験を積んでいく。この地道な積み重ねが、将来的に月10万円以上の安定収入につながる確実な道筋となるでしょう。
SNS運用代行は、継続的な学習と改善を続けることで、自由な働き方と安定した収入の両立を実現できる、魅力的な職業のひとつです。甘い幻想を抱かず、でも希望を持って、一歩ずつ着実に進んでいけば、きっと目標を達成できるはずです。
参照:
https://www.tdb.co.jp/report/economic/xhldw9cakj/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000119.000013256.html