シェアオフィスの種類と選び方を解説!働き方改革時代のオフィス選びとは

シェアオフィスの種類と選び方を解説!働き方改革時代のオフィス選びとは

当コラムでは、これからの働き方の観点から、AIを活用したコンテンツ制作に取り組んでいます。AIと人の協働によって、新しい視点や価値を生み出すことを目指しています。

働き方改革とテレワークの浸透により、オフィスに対する考え方が根本的に変化しています。従来の「全社員が毎日同じオフィスに出社する」というモデルから、より柔軟で効率的なワークスタイルへの転換が進む中で、注目を集めているのが「シェアオフィス」です。

しかし、シェアオフィスと一口に言っても、コワーキングスペース、レンタルオフィス、サービスオフィスなど、様々な形態が存在し、それぞれ異なる特徴を持っています。特にテクノロジー企業にとっては、セキュリティ要件やインフラ環境など、業界特有のニーズを満たす選択が重要となります。

この記事では、シェアオフィス市場の現状から各種類の特徴、導入時のメリット・デメリット、そしてテクノロジー企業が最適なオフィス環境を選択するためのポイントまで、実務的な観点から詳しく解説いたします。

シェアオフィス市場の現状と定義

シェアオフィスとは、複数の個人や企業が同一のオフィス空間や設備を共有して利用するワークスペースの総称です。従来の賃貸オフィス契約とは異なり、短期契約が可能で、必要な設備やサービスが予め整備されているため、初期投資を抑えながら迅速にビジネスを開始できる点が特徴です。

市場規模から見ると、グローバルなシェアオフィス市場は2024年時点で413億9,000万米ドルに達し、2029年までに627億5,000万米ドルまで成長すると予測されています。年間成長率は8.67%と、従来のオフィス市場を大きく上回るペースで拡大しています。

国内においても、日本能率協会総合研究所の調査によると、フレキシブルオフィス市場は2026年度に2,300億円規模に達する見込みとされており、確実に市場が成熟しつつあることが分かります。東京23区だけでも1,260拠点、総面積約23.9万坪のフレキシブルオフィスが存在し、年々増加傾向にあります。

この市場拡大の背景には、働き方改革による多様な勤務形態の普及、新型コロナウイルス感染症の影響によるテレワーク文化の定着、そして企業のコスト効率化ニーズの高まりがあります。

参照:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000038.000035568.html

シェアオフィスの主要な種類と特徴

シェアオフィスには複数の形態があり、それぞれ異なるニーズに対応しています。主要な5つのタイプについて、ビジネス利用の観点から詳しく見ていきましょう。

コワーキングスペース

コワーキングスペースは、オープンな共有空間を複数の利用者がフリーアドレス制で利用するワークスペースです。基本的な特徴は以下の通りです。

主な特徴

  • フリーアドレス制による座席の自由選択
  • 利用者同士の交流促進を重視した設計
  • 比較的リーズナブルな料金設定
  • Wi-Fi、電源、複合機等の基本設備を完備

適用シーン

  • フリーランサーや個人事業主
  • 小規模チームでの業務
  • 異業種交流や新規ビジネス開拓を重視する企業
  • 短期プロジェクトでの利用

シェアオフィス(狭義)

シェアオフィスは、1つの空間を複数の企業や個人で区画して利用する形態です。コワーキングスペースよりもプライバシーが確保されやすい構造となっています。

主な特徴

  • 契約者ごとのエリア・座席の簡易的な分割
  • 会員制による利用者の限定
  • コワーキングスペースとレンタルオフィスの中間的な位置づけ
  • セキュリティレベルの向上

適用シーン

  • 中小企業やスタートアップ
  • 一定のプライバシーを必要とする業務
  • チームワークを重視しつつ集中環境も確保したい企業

レンタルオフィス

レンタルオフィスは、個室スペースを提供するオフィス形態で、プライバシーとセキュリティを重視する企業に適しています。

主な特徴

  • 鍵付き個室による専有スペースの提供
  • 法人登記対応可能な施設が多数
  • 郵便物受け取りサービス等の付帯サービス
  • 即日利用開始可能

適用シーン

  • 機密性の高い業務を行う企業
  • 士業等のプロフェッショナルサービス
  • クライアント対応が頻繁な業務
  • 法人登記が必要なスタートアップ

サービスオフィス

サービスオフィスは、レンタルオフィスにプラスアルファのサービスを付加した高品質なオフィス環境です。

主な特徴

  • 受付・秘書サービスの提供
  • 高品質な内装とアメニティ
  • 好立地での展開が多い
  • ITサポート等の充実したビジネスサポート

適用シーン

  • 企業ブランディングを重視する企業
  • 海外企業の日本進出時の拠点
  • 重要なクライアント対応が必要な業務
  • 高品質なビジネス環境を求める企業

バーチャルオフィス

バーチャルオフィスは、物理的なワークスペースを提供せず、住所利用や郵便物受け取り等のサービスに特化した形態です。

主な特徴

  • 法人登記用住所の提供
  • 郵便物・宅配便の受け取り代行
  • 電話転送・秘書代行サービス
  • 最も低コストでの利用が可能

適用シーン

  • 在宅ワーク中心の事業
  • 自宅での法人登記を避けたい個人事業主
  • コスト重視のスタートアップ
  • 複数拠点展開の際のサブ拠点

シェアオフィス導入のメリットとデメリット

シェアオフィスの導入を検討する際は、メリットとデメリットの両面を理解した上で意思決定を行うことが重要です。

主要なメリット

コスト効率性の向上

従来の賃貸オフィスでは、敷金・礼金で家賃の6~12ヶ月分、さらに内装工事や設備導入で数百万円から数千万円の初期投資が必要でした。シェアオフィスでは、これらの初期費用を大幅に削減できます。月額料金にも光熱費やインターネット料金、清掃費が含まれるケースが多く、ランニングコストの予測がしやすいというメリットもあります。

柔軟性とスケーラビリティ

最短1ヶ月からの契約が可能で、事業の成長や市場変化に応じてスペースの拡大・縮小を柔軟に行えます。プロジェクト単位での利用や、季節要因による人員変動への対応など、従来のオフィス形態では難しかった運用が可能になります。

設備・サービスの充実

高速インターネット、複合機、会議室、受付サービスなど、ビジネスに必要な設備・サービスが予め整備されています。これにより、企業は本来業務に集中でき、オフィス管理業務の負担を軽減できます。

ネットワーキング機会の創出

多様な業種・職種の利用者が集まるため、新たなビジネスパートナーシップや顧客開拓の機会が生まれやすい環境です。運営会社が主催する交流イベントやセミナーも、ビジネス拡大の貴重な機会となります。

立地優位性の獲得

都心の一等地など、通常は高額で手が届かない好立地にオフィスを構えることが可能です。これにより、企業の信頼性向上やアクセス性の改善を図ることができます。

注意すべきデメリット

セキュリティリスクの増大

共有環境であるため、情報漏洩のリスクは従来のオフィスより高くなります。重要書類の管理、PC画面の覗き見防止、共有Wi-Fiのセキュリティレベルなど、企業側での対策強化が必要です。

プライバシーの制約

オープンスペースでは、機密性の高い会話や業務に制約が生じます。個室や会議室の利用が必要になる場面が多く、追加費用や予約の手間が発生する可能性があります。

作業環境の制御困難

騒音レベル、温度設定、レイアウトなど、作業環境を自由にコントロールできない場合があります。集中を要する業務には不向きな環境になることもあります。

設備利用の競合

会議室や特定の設備は他の利用者との共用となるため、必要な時に利用できない可能性があります。重要な商談や会議の際は、事前の入念な予約が必要です。

長期利用時のコスト増

短期利用では有利ですが、長期利用の場合、総コストが従来の賃貸オフィスを上回る可能性もあります。事業計画と照らし合わせた長期的なコスト試算が重要です。

テクノロジー企業向けの選定ポイント

テクノロジー企業がシェアオフィスを選定する際は、一般的な選定基準に加えて、業界特有の要件を満たす必要があります。以下の観点から詳しく検討することをお勧めします。

インフラストラクチャーの評価

ネットワーク環境の品質

開発業務、大容量データの送受信、オンライン会議など、テクノロジー企業の業務では高速で安定したインターネット接続が不可欠です。回線速度は下り・上りともに100Mbps以上、できれば1Gbps以上の環境が理想的です。また、回線の冗長化やバックアップ体制についても確認しましょう。

電源・設備の充実度

開発用PC、複数モニター、サーバー機器など、一般的なオフィスワークより電力消費が大きい機器を使用することが多いため、十分な電源容量と安定供給が確保されているかを確認する必要があります。

セキュリティ要件の確認

物理的セキュリティ

入退室管理システム(ICカード、生体認証等)、監視カメラの設置状況、セキュリティガードの配置など、物理的なセキュリティレベルを詳細に確認しましょう。特に24時間利用可能な施設では、夜間・休日のセキュリティ体制も重要です。

ネットワークセキュリティ

ファイアウォール、侵入検知システム、ネットワーク分離の実装状況を確認します。VPN接続の可否、専用回線オプションの有無も重要な検討項目です。また、GDPR、PCI DSS等の国際的なセキュリティ基準への対応状況も確認しましょう。

データ保護方針

運営会社のプライバシーポリシー、データ保護方針、インシデント対応手順を確認し、自社のコンプライアンス要件と合致するかを検証します。

法務・コンプライアンス要件

法人登記対応

スタートアップ企業では法人登記が必要になるケースが多いため、登記対応の可否と条件を確認します。また、業種によっては特定の条件(面積、設備等)が求められる場合があるため、関連法規との適合性も検証が必要です。

契約条件の柔軟性

短期契約の可否、中途解約条件、利用人数変更時の手続きなど、事業の変化に対応できる契約条件かを確認します。特にスタートアップでは事業ピボットや急成長の可能性があるため、柔軟性は重要な要素です。

事業継続性の観点

拡張性とスケーラビリティ

現在の人員規模だけでなく、6ヶ月~1年後の事業計画も考慮した選択が重要です。同一施設内での拡張可能性、他拠点への移転支援、複数拠点利用プランなど、成長に対応できる仕組みがあるかを確認しましょう。

事業継続計画(BCP)対応

災害時の代替オフィス提供、データバックアップ支援、緊急時の連絡体制など、事業継続に関するサポート体制を確認します。

コストパフォーマンスの総合評価

総所有コスト(TCO)の算出

基本料金だけでなく、オプション費用、追加サービス料金を含めた総コストを試算します。特に、会議室利用料、印刷費用、ロッカー代、駐車場代など、実際の利用パターンを想定した現実的な費用計算が重要です。

投資対効果(ROI)の検証

従来のオフィス形態と比較して、コスト削減効果、生産性向上効果、ビジネス機会創出効果を定量的に評価します。短期的なコストメリットだけでなく、中長期的な事業価値への貢献も考慮しましょう。

契約プロセスと導入時の注意点

シェアオフィスの導入を決定した後は、適切な契約プロセスを経て、スムーズな利用開始を実現することが重要です。

事前準備フェーズ

要件定義の明確化

利用人数、必要設備、セキュリティ要件、予算範囲など、自社の要件を明確に定義します。また、利用開始希望日、契約期間、将来の拡張計画なども整理しておきましょう。

複数候補の比較検討

3~5つの候補を選定し、要件に対する適合度を評価表形式で比較検討します。価格だけでなく、立地、設備、サービス品質、運営会社の信頼性なども総合的に評価しましょう。

内覧・評価フェーズ

実地確認の重要ポイント

内覧時は、異なる時間帯(朝、昼、夕方)の環境を確認することをお勧めします。騒音レベル、混雑状況、ネットワーク速度など、実際の利用環境を体感することが重要です。

技術的検証の実施

可能であれば、実際にPCを持参してネットワーク速度のテスト、セキュリティツールの動作確認、VPN接続テストなどを行いましょう。

契約フェーズ

契約書の詳細確認

利用規約、料金体系、解約条件、損害賠償条項など、契約書の内容を法務担当者と共に詳細に確認します。特に、知的財産権、機密保持、免責事項については慎重な検討が必要です。

SLA(サービスレベル合意)の確認

ネットワーク稼働率、障害対応時間、サポート体制など、サービスレベルに関する合意内容を明確にします。

利用開始後の運用

セキュリティガイドラインの策定

従業員向けのセキュリティガイドラインを策定し、共有スペース利用時の注意点、機密情報の取り扱い方法、インシデント発生時の対応手順などを明確にします。

定期的な利用状況の評価

月次または四半期ごとに利用状況を評価し、コスト効率性、生産性への影響、満足度などを測定します。必要に応じて、プラン変更や他施設への移転も検討しましょう。

業界トレンドと将来展望

シェアオフィス業界は急速に進化しており、最新のトレンドを理解することで、より戦略的な選択が可能になります。

サービス形態の多様化とテクノロジー活用

企業の働き方がハイブリッド型(オフィス勤務とリモートワークの組み合わせ)に移行する中で、シェアオフィス側も柔軟な利用プランを提供するようになっています。週2~3日利用、時間単位利用、複数拠点利用など、多様なニーズに対応したサービスが増加しています。

また、IoTセンサーによる座席の利用状況管理、AIを活用した最適な席の提案、スマートフォンアプリでの設備予約など、テクノロジーを活用したサービス向上が進んでいます。これにより、利用者の利便性向上と運営効率化の両立が図られています。

利用企業層の拡大と地域展開

従来はスタートアップや中小企業の利用が中心でしたが、大企業による利用も急速に拡大しています。新規事業部門の独立、イノベーション創出のための環境変化、BCP対応など、様々な目的で大企業がシェアオフィスを活用するケースが増えています。

同時に、東京都心部に集中していたシェアオフィスが、地方都市にも展開を拡大しています。地方創生やワーケーションの普及により、地方でも質の高いワークスペースに対するニーズが高まっています。

専門特化型サービスの台頭

IT・テクノロジー特化、クリエイティブ特化、女性向けなど、特定の業界やユーザー層に特化したシェアオフィスが増加しています。これにより、より専門的なニーズに対応したサービス提供が可能になっており、一般的なシェアオフィスとは差別化された価値を提供しています。

まとめ

シェアオフィスは、働き方改革の進展とともに、従来の固定的なオフィス概念を変革する重要な選択肢として確立されました。特にテクノロジー企業にとっては、事業の成長段階や市場環境の変化に柔軟に対応できるオフィス戦略の一環として、大きな価値を提供します。

成功のポイントは、自社の事業特性と要件を正確に把握し、多様なシェアオフィスの種類から最適なものを選択することです。コスト効率性、セキュリティ要件、拡張性、ビジネス機会創出の可能性など、複数の観点から総合的に評価することが重要です。

市場の急速な成長と多様化により、今後さらに選択肢は拡大することが予想されます。定期的な市場動向の把握と、自社ニーズの見直しを行いながら、最適なオフィス戦略を継続的に構築していくことが、変化の激しいビジネス環境での競争力維持につながるでしょう。

テクノロジー企業の経営陣および施設管理担当者は、シェアオフィスを単なるコスト削減手段としてではなく、事業成長を支援する戦略的な投資として位置付け、長期的な視点での活用を検討されることをお勧めします。