2025年春のAIモデル最新トレンド&これからの働き方

2025年春のAIモデル最新トレンド&これからの働き方

「また新しいAIが出たらしいよ」

最近、こんな会話をよく耳にしませんか?ChatGPT、Claude、Gemini、Grok、DeepSeek…次々と新しいAIの名前が登場し、もはや何が何だかわからなくなっている人も多いのではないでしょうか。

今回は、AIチャットプラットフォーム「Poe(ポー)」が最近公開した「2025年春のAIモデル使用トレンド」レポートを中心に、今どんなAIが人気で、どんな変化が起きているのか、紹介していきます。

このレポートは、2025年1月から2025年5月までのPoeユーザーのAIモデル使用データを集計・分析した貴重な情報源です。

参照:
https://poe.com/ja/blog/spring-2025-ai-model-usage-trends

現代の働き方は大きな転換期にあります。リモートワークの定着、複業の広がり、個人の専門性を活かした独立の増加…。そんな新しい働き方を後押しし、時には根本から変えてしまうほどの力を持っているのが、急速に進化するAI技術です。どのAIツールを味方につけるかで、あなたの仕事の質や効率、そして可能性は大きく変わるかもしれません。

大手各社のAIモデル戦国時代

2025年に入り、AIモデルの競争は激化の一途をたどっています。特に、テキスト(文章生成)AIの世界では、OpenAI、Google、Anthropic、DeepSeek、xAIなどの企業が、より高性能なモデルを次々とリリースしています。

Poeの調査によると、OpenAIの「GPT-4.1」ファミリーとGoogleの「Gemini 2.5 Pro」は、発表からわずか数週間でそれぞれ約10%と約5%のメッセージシェアを獲得。特に実用的なコーディングタスクなどでの性能向上が評価されています。

一方、これまで人気を博していたAnthropicの「Claude」ファミリー(Claude 3.5 SonnetやClaude 3.7 Sonnet)は、同じ期間に約10%の絶対的なシェア低下を経験しました。

「ユーザーは常に最新・最高性能のAIを求める傾向にある」とPoeのレポートは指摘しています。同じ会社のモデルでも、新しいフラッグシップモデルが出ると、ユーザーはすぐに乗り換える傾向があるようです。例えば、Claudeの場合、Claude 3.5 SonnetからClaude 3.7 Sonnetへの移行が迅速に進んだものの、Claude 3.5 Sonnetも依然として約12%の使用率を維持しています。

こうしたテキスト生成AIの進化は、多くの職種の働き方を変えつつあります。特に注目すべきは、ビジネス文書作成の効率化です。かつて数時間かかっていた企画書やレポート作成が、AIの支援により大幅に短縮されるようになりました。また、多言語対応が強化されたことで、グローバルなコミュニケーションの障壁も低くなっています。

推論モデルの台頭

2025年初頭から大きな注目を集めているのが「推論モデル」です。これは、複雑な問題に対して、より多くの時間と計算リソースを使って、より正確で信頼性の高い回答を提供するAIモデルのことです。

特に中国のDeepSeekが発表した「DeepSeek-R1」は、1月に登場するや否や大きな話題となりました。米国のApp Storeランキングで首位を獲得するほどの人気を博したのです。その理由は、OpenAIの高性能モデル「o1」に匹敵する性能を持ちながら、圧倒的に低コストだったから。OpenAIのo1が入力100万トークンあたり15ドル、出力100万トークンあたり60ドルだったのに対し、DeepSeek-R1は入力0.55ドル、出力2.19ドルと約96%も安く設定されていたのです。

複雑なビジネス判断や専門的な分析が求められる職種では、こうした推論モデルの活用が新たな働き方をもたらしています。例えば、医療現場では診断サポート、法律分野では判例分析、財務部門ではリスク評価など、これまで人間の専門知識に大きく依存していた領域でAIと人間の協働が進んでいます。自分の専門性を活かしながら、AIの推論機能を上手く活用できるスキルは、今後のキャリア形成において大きな武器となるでしょう。

画像生成AIの競争激化 ~ 品質と忠実度の向上

テキストAIの世界だけでなく、画像生成AIの分野でも大きな変化が起きています。

Poeの調査によると、OpenAIの「GPT Image Generation(GPT-Image-1)」は4月末にAPIでリリースされてからわずか2週間で、画像生成使用量の17%を獲得。これは、ChatGPTアプリでの爆発的な普及を反映したものでしょう。

一方、Googleの「Imagen3」ファミリーは2025年を通じて着実に成長を続け、シェアを約10%から約30%へと伸ばしています。これにより、カテゴリーリーダーであるBlack Forest Labsの「FLUX」ファミリーと肩を並べるまでになりました。

FLUXは2024年8月にリリースされた画像生成AIで、Stable Diffusionの開発チームが立ち上げたBlack Forest Labsによって開発されました。高品質な画像生成能力で注目を集め、当初は画像生成AIのシェアの約45%を占めていましたが、現在は約35%へと若干減少しています。

クリエイティブな仕事に関わる人々にとって、こうした高品質な画像生成AIの登場は仕事の進め方を根本から変えつつあります。これまで外部に依頼していたビジュアル制作を内製化したり、アイデアの可視化を素早く行えるようになったことで、企画プロセスが劇的に効率化しています。

また、独立やフリーランスとして活動するデザイナーやイラストレーターも、AIを補助ツールとして活用することで、より高度なクリエイティブワークに集中できるようになっています。

ChatGPTで生成した画像

動画生成AIの新星 ~ 「Kling」の躍進

動画生成AIの分野では、中国の快手(Kuaishou)が開発した「Kling」ファミリーが急速に台頭しています。

特に「Kling-2.0-Master」は、4月末にリリースからわずか3週間で、Poeでの全動画生成量の21%を占めるまでになりました。Klingファミリー全体で見ると、約30%の使用シェアを獲得しています。

Klingは、テキストから動画を生成するだけでなく、画像から動画を作成する機能も備えており、2025年3月にリリースされた「Kling 1.6」の「Elements機能」では、最大4枚の画像をアップロードして参照しながら動画を生成できるようになりました。

マーケティングやSNSコンテンツ制作の現場では、これらの動画生成AIが仕事の進め方を大きく変えています。これまで専門のスタッフや業者に発注していた動画制作を、マーケターや企画担当者が自ら手掛けられるようになってきているのです。また、個人クリエイターやフリーランサーにとっては、高品質な動画コンテンツを短時間で制作できるようになったことで、複数のプロジェクトを並行して進められるようになり、新たな働き方の可能性が広がっています。

一方、2月にリリースされたGoogleの「Veo 2」も約20%の強固な使用シェアを維持しています。

カテゴリを定義した動画生成AIの先駆者であるRunwayは、報告期間を通じて使用シェアが約40%から約20%に減少したようです。これは新興プレイヤーの台頭に伴う自然な市場の再編と見られています。

オーディオ生成における競争の兆し

テキスト読み上げ(TTS)を中心としたオーディオ生成の分野では、ElevenLabsが依然として強いリーダーシップを発揮しています。Poeのレポートによれば、ElevenLabsは報告期間中、すべてのTTSリクエストの約80%を処理していました。

しかし、この分野にも新しい競争の波が押し寄せつつあります。Cartesia、Unreal Speech、PlayAI、Orpheusといった新興企業が、独自の声のオプション、音声エフェクト、そして異なるパフォーマンスと価格プロファイルを提供し始めています。

ElevenLabsは32言語に対応する高品質な音声合成技術で知られていますが、Cartesiaは15言語のサポートとより速いレスポンス時間を強みとしています。PlayAIは最近「Dialog 1.0」という新しい音声モデルをリリースし、第三者のベンチマークテストではElevenLabsのモデルよりも好まれる結果も出ているようです。

また、Orpheusは2025年5月に最新の多言語モデルをリリースしており、オープンソースモデルとしては非常に高い音声品質を実現しています。

これらの音声生成技術の発展は、オーディオコンテンツの制作現場や働き方にも変革をもたらしています。ポッドキャスターやオーディオブック制作者は、多様な声を使い分けながら、一人で複数の話者を演じ分けることができるようになりました。また、多言語コンテンツの制作においても、ナレーション部分を各言語のネイティブ話者に収録し直す必要がなくなり、よりスケーラブルな制作が可能になっています。

複業としてオーディオコンテンツ制作に取り組む人も増えており、音声AIの進化がコンテンツクリエイターの新たな活躍の場を生み出しています。そして企業のマーケティング部門でも、これまで外注していた音声ナレーション制作を内製化する動きが見られ、よりアジャイルなコンテンツ制作が進んでいます。

AIモデル選択の多様化 ~ 何を使うべきか?

ここまでさまざまなAIモデルの最新トレンドを紹介してきましたが、「結局、どのAIを使えばいいの?」という疑問が湧いてくる方も多いでしょう。

実は、この問いに対する答えは「目的による」というものです。用途やニーズによって最適なモデルは異なります。

テキストAIに関して言えば、一般的な会話や文章生成ならChatGPTやClaudeが安定した選択肢です。特に複雑な推論や分析が必要な場合は、GPT-4.1や最新のClaude 3.7 Sonnet、あるいはGemini 2.5 Proといった最新モデルが適しています。

画像生成では、よりリアルな写真風の画像を求めるならGoogleのImagen3、芸術的で創造的な表現を求めるならFLUXという選択肢があります。

動画生成の場合、カメラワークの細かい制御が必要ならKling、より簡単に高品質な動画を生成したいならVeo 2が良いでしょう。

音声生成では、多言語対応と高品質な音声を求めるならElevenLabs、より速いレスポンスを重視するならCartesiaを検討すると良いでしょう。

新しい働き方を目指す方々にとって、AI選びは単なるツール選定以上の意味を持ちます。例えば、複業として文章制作を行う場合は、文脈理解力に優れるClaudeを、デザイン関連の副業ならFLUXやImagen3を、音声コンテンツ制作を手がけるならElevenLabsを、といった具合に、自分のビジネスモデルに合わせたAI選びが成功のポイントとなるでしょう。

AIエコシステムの今後と働き方への影響

Poeのレポートから見えてくるのは、AIモデルの多様化と競争の激化です。テキスト、画像、動画、音声と、あらゆる分野でAI技術が急速に進化しています。

また、人気のあるAIモデルも数か月で入れ替わるほど変化が早く、常に最新の情報をキャッチアップすることが重要です。

2025年は、推論モデルの成長や、マルチモーダル(テキスト、画像、音声、動画を横断して扱える)AIの普及、さらにはAIエージェント(自律的にタスクを実行できるAI)の台頭など、さらなる革新が期待されます。

こうしたAI技術の進化は、私たちの働き方にも大きな変革をもたらしています。特に注目すべきは、以下のような変化です:

  • スキルの再定義
    各分野の専門家にとって、AIツールを効果的に活用するスキルが必須になりつつあります。例えば、プロンプトエンジニアリング(AIに的確な指示を出す技術)は、多くの職種で求められる新しいスキルセットとなっています。
  • 複業・副業の拡大
    高性能なAIツールの普及により、これまで専門知識や技術が必要だった領域への参入障壁が下がっています。その結果、本業とは異なる分野での副業や複業に挑戦する人が増えています。
  • 個人の生産性向上
    AIによる定型業務の効率化や創造的作業のサポートにより、個人の生産性が飛躍的に向上。これにより、より価値の高い業務に集中したり、ワークライフバランスを改善したりする可能性が広がっています。
  • 新しい職種の誕生
    AIとヒトの協働を設計するAIソリューションアーキテクトや、AIの出力を評価・改善するAIトレーナーなど、AIの普及に伴って新たな職種が生まれています。

まとめ

AIの進化は止まることを知りません。日々新しいモデルやアップデートが登場する中で、私たちがすべきことは、これらのツールに振り回されるのではなく、自分のニーズや目的に合わせて賢く選択し、活用していくことなのかもしれません。

あなたが複業に挑戦するにせよ、独立を目指すにせよ、あるいは現在の職場でキャリアを発展させるにせよ、適切なAIパートナーを選ぶことは、これからの働き方を考える上で欠かせない要素となるでしょう。

あなたは、どのAIと一緒に2025年を過ごしますか?