副業の仕事の断り方|次につながる伝え方と、そのまま使える文面

副業の仕事の断り方|次につながる伝え方と、そのまま使える文面

副業を続けていると、受けきれない依頼が来る時期が必ず訪れます。稼働が埋まっている、単価が見合わない、内容が自分の領域から外れている。それでも断りきれずに引き受けてしまい、後で納期に追われる。この流れを、相談の場で何度も見てきました。

断れない理由を尋ねると、返ってくる答えはほぼ共通しています。ここで断ったら、次の依頼が来なくなるのではないか。せっかくつながった相手を、失いたくない。

ただ実際に起きていることは、少し違うようです。断ったから関係が終わるのではなく、断り方によって次が決まります。そして曖昧に断った人ほど、結果として声がかからなくなるようです。

この記事では、断る判断をどう下すか、理由別にどう伝えるか、そしてそのまま使える文面を整理します。読み終えたときに、断ることを関係づくりの一部として扱える状態を目指します。

なぜ断れないのか

まず、断れなさの正体を分解しておきます。ここを整理しないまま文面だけ用意しても、実際の場面では使えません。

なお当メディアでは、本業と並行して複数の仕事を持つ働き方を「複業」と表記しています(詳しくは副業と複業の違いとは?キャリアアップのためのこれからの選択肢をご覧ください)。

「次が来なくなる」は、予測でしかない

断れない人が抱えているのは、将来への予測です。この依頼を断ったら、次は来ないかもしれない。そう考えると、目の前の依頼を手放せなくなります。

しかしこの予測は、自分では確かめようがありません。相手が次に誰へ依頼するかは、相手の事情で決まります。こちらがどれだけ考えても、コントロールできない領域です。

起業家の意思決定を研究した「エフェクチュエーション」という理論に、未来は予測するものではなく自分の行動でつくり出すもの、という原則があります。当たるかどうか分からない見通しに賭けるより、自分が動かせる範囲に集中したほうがいい、という考え方です。

これを断る判断に当てはめると、迷いどころがはっきりします。「この依頼を受けたら次につながるか」は予測であり、こちらでは動かせません。一方で「この稼働量を自分が守れるか」は、いま手元にある情報で判断できます。

見るべきは後者です。挑戦する姿勢そのものは良いものですが、引き受けられるかどうかは意欲ではなく、自分に制御できるかどうかで決めます。守れない約束をして納期を落とすほうが、断るよりもはるかに関係を損ないます。断ったことで縁が切れるより、引き受けて果たせなかったことで切れるケースの方が、実際にはずっと多いようです。

会社員は、実は断りやすい立場にある

見落とされがちですが、複業をしている会社員は構造的に有利な立場にあります。

本業の収入がある以上、目の前の1件を失っても生活が揺らぎません。専業でこの仕事をしている人と比べると、この差は小さくありません。断ることによる実質的な損失が、そもそも軽いのです。

にもかかわらず断れないのは、金銭的な必要性ではなく、関係を壊したくないという気持ちが理由になっています。その気持ち自体は自然なものですが、判断の材料としては曖昧すぎます。

断ることへの罪悪感は、相手の状況を知らないことから来る

断れなさを強めている要因が、もう一段深いところにあります。断ることで相手をひどく困らせてしまう、という想像です。

しかし発注する側から見ると、断られること自体は日常的な出来事です。複数の候補に声をかけていることも多く、こちらが唯一の選択肢であるケースはむしろ稀です。断られた時点で次の相手を探すという、通常の手順に戻るだけになります。

相手が本当に困るのは、断られたときではありません。引き受けてもらえると思って進めていた計画が、途中で崩れたときです。だから、受けられないと分かっているなら、早く伝えるほど相手にとって親切な対応になります。

罪悪感を持つとすれば、断ること自体ではなく、伝えるのが遅れたときの方です。

断らずに受けた結果、何が起きるか

では、断らずに引き受けた場合はどうなるでしょうか。

稼働が足りないまま受けると、納期が押します。品質を落とすか、期限を延ばしてもらうか、どちらかを選ぶことになります。どちらも相手に迷惑がかかり、断った場合よりも印象を悪くします。

さらに、無理を通した仕事は次の依頼につながりません。仕上がりに納得がいかないまま納品したものを見て、相手が再依頼を考えることは少ないためです。断らずに受けることが、結局は次を遠ざけています。

理由別に、どう伝えるか

断る理由は、大きく3つに分かれます。それぞれ伝え方が異なります。

単価が合わないとき

金額の話を、関係の話にしないことが要点です。「予算が低いので受けられません」と伝えると、相手を値切っていると責めているように響きます。

そうではなく、自分の側の基準として提示します。この作業量であればこの金額をいただいている、という形です。相手を評価するのではなく、自分の条件を開示する形にすると、交渉の余地が残ります。

金額を伝えたうえで、作業範囲を狭める案を添える方法もあります。予算に合わせて引き受ける範囲を調整できるなら、断らずに済むこともあります。自分の金額をどう決めるかという話は、相場を扱う回に譲ります。

稼働が足りないとき

このケースで有効なのは、時期をずらす提案をセットにすることです。

「今は受けられません」で止めると、相手は次を探しにいきます。しかし「今月は難しいのですが、来月の中旬以降であれば対応できます」と伝えれば、相手には待つという選択肢が生まれます。急ぎでなければ、そのまま依頼が続くこともあります。

このとき提示する時期も、守れる下限で答えてください。焦って早めの日程を伝えると、結局また同じことになります。

内容が合わないとき

自分の領域から外れた依頼が来たときは、できないことを明確に伝えます。ここを曖昧にすると、相手は「調整すれば受けてもらえる」と考えて交渉を続けてしまいます。

このとき、面談の回でも触れた「境界を自分から引く」という考え方が効きます。どこまでが自分の対応できる範囲で、どこから先が外れるのかを示すと、相手も判断しやすくなります。場合によっては、外れる部分を除いた依頼に組み替えてもらえることもあります。

そのまま使える文面

文面の例を挙げます。ただし、そのまま写すよりも、なぜこの構成なのかを掴んでおく方が応用が効きます。共通しているのは、断る意思を先に明示し、理由を短く添え、次につながる要素で閉じる形です。

初回の依頼を断る場合

「お声がけいただきありがとうございます。内容を拝見しましたが、現在お引き受けしている案件があり、ご希望の時期には十分な時間を確保できない見込みです。今回は見送らせていただければと思います。◯月中旬以降であれば対応できますので、時期を調整いただける場合は、あらためてご相談させてください。」

冒頭で礼を述べ、断る事実を先に置いています。理由は一文のみで、詳しく説明していません。最後に、いつなら受けられるかを示しています。

継続案件で、追加の依頼を断る場合

「いつもありがとうございます。追加のご相談ですが、現在お受けしている◯◯の納期を優先したいため、今回の分は難しい状況です。◯◯を納品した後であれば着手できますので、お急ぎでなければその時期にご相談いただけますでしょうか。もしお急ぎでしたら、他の方をあたっていただく形で問題ありません。」

継続案件の場合、すでに受けている仕事を守ることが理由になります。これは相手にとっても納得しやすい理由です。急ぐ場合の逃げ道を用意しておくと、相手が動きやすくなります。

途中で条件が変わった案件を降りる場合

「ご相談させてください。当初うかがっていた範囲から作業量が増えており、このままでは納期と品質の両方を守れない見込みです。範囲を当初の内容に戻していただくか、納期を◯日まで延ばしていただくことは可能でしょうか。いずれも難しい場合は、今回は途中でお返しする形を考えております。」

降りる場合でも、いきなり終了を告げるのではなく、まず調整案を示します。ここまで示したうえで折り合わないのであれば、降りる判断は妥当です。

紹介や知人からの依頼を断る場合

最も断りにくいのが、知人や過去の同僚から回ってきた依頼です。仕事の条件だけでなく、人間関係が乗っているためです。

この場合も、伝える内容は変わりません。ただし、相手が紹介者としての立場を持っているときは、その人の顔を潰さない配慮を添えておくと角が立ちません。

「ご紹介いただきありがとうございます。せっかくお声がけいただいたのですが、現在の稼働状況では十分な品質でお応えできない見込みです。中途半端な形でお引き受けして、ご紹介いただいた◯◯さんにご迷惑をかけるのは避けたいので、今回は見送らせてください。時期が合えばぜひまたご相談させていただきたいです。」

紹介者への配慮を理由として示すと、断ることが相手を軽んじた結果ではないと伝わります。実際、無理に受けて品質を落とせば、困るのは紹介してくれた人です。

返信を保留したいとき

即答できない依頼もあります。条件を整理する時間が要るときは、無理にその場で答えを出さなくて構いません。

ただし、保留の連絡は早く入れます。「検討します」と言ったまま数日空けるより、いつまでに返事をするかを伝えておく方が、相手は動きやすくなります。

「ご相談ありがとうございます。手元の案件との兼ね合いを確認したいので、明日中にお返事させてください。」

この一文があるだけで、相手は待つ判断ができます。返事が遅れること自体より、いつ返ってくるか分からない状態の方が困らせます。

断ったあとで、また依頼が来る人

同じように断っていても、その後また声がかかる人とそうでない人がいます。違いは2つに絞られます。

代替案を、1つだけ添える

別の進め方、時期をずらす案、あるいは対応できそうな人を紹介する。何かひとつでも添えられていると、相手は次の手を打てます。

重要なのは、1つに絞ることです。選択肢を複数並べると、相手は検討の手間を負うことになります。断られたうえに考えることが増えると、負担だけが残ります。最も現実的だと思うものをひとつ示す形が、最も親切です。

理由を、正直に伝える

実際に差が出るのはここです。稼働が足りないのか、単価が合わないのか、内容が領域外なのか。実際の理由を伝えると、相手は次の依頼を調整できます。

稼働が理由だと分かれば、次は早めに声をかけようと考えます。単価が理由なら、予算を確保してから相談しようとなります。内容が理由なら、合いそうな依頼のときに声をかけます。

逆に「今回は都合がつかず」とだけ伝えると、相手は何を変えれば受けてもらえるのかが分かりません。改善のしようがないため、次に思い出す理由もなくなります。

ここに逆説があります。断れない人が恐れている「次が来なくなる」という事態は、はっきり断ったときではなく、曖昧に断ったときにこそ起きています。

断る基準を、先に決めておく

その場で判断しようとすると、たいてい引き受けてしまいます。相手を前にして条件を検討する状況では、断る理由を探す方が難しいためです。

だから、受ける条件を先に書き出しておきます。

先に決めておく3つの条件
  • 件数/同時に抱える案件は何件までか
  • 金額/最低いくらから受けるか
  • 範囲/対応する領域はどこまでか

この3つが決まっていれば、判断はほぼ機械的に済みます。

基準があると、断ることが個人的な拒絶ではなくなります。条件に合わなかっただけであり、相手を評価した結果ではありません。伝える側の心理的な負担も軽くなります。

相手の側から見ても、基準がはっきりしている人の方が付き合いやすいものです。どういう依頼なら受けてもらえるかが分かるため、次に声をかける判断がしやすくなります。何でも引き受ける人より、条件がはっきりしている人の方が、結果として長く関係が続きます。

そして基準は、一度決めたら変えてはいけないものではありません。手が空いたなら緩め、余裕がなくなったら締める。定期的に見直す前提で持っておけば十分です。

ただし、基準を下回る依頼を例外的に受けるときは、その理由を自分で説明できる状態にしておいてください。今後につながる相手だから、内容に強い関心があるから、といった判断があるなら問題ありません。危ういのは、断りにくかったからという理由で例外にしてしまうことです。それが続くと、基準そのものが形だけのものになります。

例外を作った場合は、その案件が終わった時点で振り返っておくと、次の判断が正確になります。受けてよかったのか、やはり基準どおりに断るべきだったのか。この記録が積み重なると、基準の精度が上がっていきます。

まとめ:断ることは、続けるための手段

この連載では、複業で最初の1件を取るところから、面談、要件のすり合わせ、納期の管理までを扱ってきました。最後に断り方を置いたのには理由があります。

引き受け続けることと、仕事を続けられることは、同じではないからです。守れない量を抱えれば納期が崩れ、品質が落ち、結果として次が来なくなります。断るという判断は、引き受けたものを守り切るために必要な工程です。

振り返ると、この連載で繰り返してきたことは共通しています。提案文では相手を読んだ証拠を示すこと、面談では守れる下限を数字で伝えること、実績では完遂した記録を積むこと。どれも、自分が確実に果たせる範囲を示す行為でした。断ることも、その延長線上にあります。

この記事の内容を、3つに整理します。

  • コントロールできる側で判断する/「次につながるか」は予測。「この量を自分が守れるか」で決める
  • 断る理由は正直に伝える/曖昧に断るほうが、相手は次の調整ができず、結果として声がかからなくなる
  • 代替案は1つだけ添える/いつなら受けられるかを示せば、相手は待つという選択肢を持てる

今日できることがあるとすれば、受ける条件を3つ書き出しておくことです。件数、金額、対応範囲。これが決まっていれば、次に依頼が来たとき、迷う時間がなくなります。

複業は、引き受けた数で評価されるものではありません。最後まで届け切った回数が、そのまま信頼として積み上がっていきます。断るという判断は、その回数を目減りさせないために使うものだと考えてください。

複業に向けた学びを続けたい方は、オモシゴキャリアの無料会員登録をご検討ください。会員限定の学習コンテンツや会員向けイベント情報をご確認いただけます。