オンラインスクールを契約したものの、内容が期待と異なっていた、あるいは事情が変わり解約したいと考えるケースは少なくありません。
そのような場合、クーリングオフ制度を利用して契約を解除し、支払った料金の返金を求められる可能性があります。
しかし、全てのオンライン講座が対象となるわけではなく、適用には特定の条件を満たす必要があります。
この記事では、オンラインスクールのクーリングオフの条件や具体的な返金手続き、そして制度が利用できない場合の対処法について詳しく解説します。
オンラインスクールはクーリングオフできる?対象となる条件
オンラインスクールの契約がクーリングオフの対象になるかは、その契約内容によります。
特に、契約期間が長く高額なオンライン講座の場合、「特定継続的役務提供」という契約形態に該当し、クーリングオフが適用される可能性があります。
一方で、一般的な通信販売と見なされる場合は対象外となるなど、判断が分かれる点に注意が必要です。
どのような条件を満たせば契約を解除して返金を求められるのか、法律上のルールを正しく理解することが重要です。
無条件で契約解除できるクーリングオフ制度とは
クーリングオフは、訪問販売や電話勧誘など、不意打ち性の高い取引で契約した消費者を保護するための制度です。
契約後に冷静に考える時間を与え、一定の期間内であれば、消費者は事業者に対して一方的に、かつ無条件で契約を解除できます。
この制度を利用する際に、解約理由を説明する必要はなく、違約金や損害賠償を請求されることもありません。
すでに支払った費用がある場合は、全額の返金を受けることが可能です。
特定の条件を満たせば、オンラインスクールのようなサービス契約にもこの制度が適用される場合があります。
オンラインスクールが特定継続的役務提供にあたる場合
オンラインスクールとの契約が特定継続的役務提供に該当する場合、クーリングオフの対象となります。
特定継続的役務提供とは、エステや学習塾、パソコン教室など、長期間にわたって継続的に提供されるサービスを指し、オンライン講座も含まれることがあります。
法律で定められた条件は、「契約期間が2ヶ月を超え、かつ契約金額(入会金や教材費なども含む総額)が5万円を超える」ことの両方を満たす場合です。
この条件に当てはまるオンラインスクールの契約であれば、法定の契約書面を受け取った日から8日以内はクーリングオフが可能となり、支払った全額の返金を求めることができます。
オンラインスクールをクーリングオフする具体的な手順
オンライン講座の契約がクーリングオフの対象であると確認できたら、期間内に正しい手順で手続きを進める必要があります。
手続きを誤ると、クーリングオフが認められず、返金を受けられなくなる恐れもあるため注意が必要です。
契約書面を受け取った日を基準とした期間の確認、証拠が残る形での通知、そしてクレジットカード決済の場合の対応など、返金を確実にするための具体的なステップを理解しておくことが大切です。
1. 契約書面を受け取ってから8日以内か確認する
クーリングオフの手続きで最も重要なのは、期間を厳守することです。
期間は、契約を申し込んだ日やサービスが開始された日からではなく、「法定の契約書面を受け取った日」を1日目として計算し、8日以内と定められています。
例えば月曜日に書面を受け取った場合、翌週の月曜日が期限となります。
もし事業者から契約書面が交付されていない、または書面の内容に不備があるといったケースでは、この期間は進行しないため、8日を過ぎていてもクーリングオフが可能です。
まずは手元の契約書面で交付日を確認し、期間内であるかを正確に把握することが返金手続きの第一歩です。
2. ハガキや書面で解約の通知を送付する
クーリングオフの意思表示は、電話や口頭ではなく、証拠が残る書面で行うことが不可欠です。
一般的には、ハガキや封書、またはより確実な内容証明郵便を利用します。
書面には、契約年月日、講座名、契約金額、販売会社名、そして「上記の契約を解除します」という明確な意思表示を記載し、自分の住所と氏名も忘れずに記入します。
通知の効力は、書面を発信した日(郵便局の消印日)に発生するため、期限日の消印有効です。
後々のトラブルを避けるため、送付前には必ず書面の両面をコピーし、特定記録郵便や簡易書留、内容証明郵便などを利用して送付の記録を残しておくことが、確実な返金手続きにつながります。
クレジットカード決済の場合はカード会社にも連絡が必要
受講料をクレジットカードで支払った場合、クーリングオフの通知は基本的にオンラインスクールの事業者に対して行います。クレジットカード会社への通知が必要かどうかは、状況によって異なります。JCBや楽天カードなど、一部のカード会社は、クーリングオフは利用者と利用先の間で行う手続きであり、カード会社への通知は不要としている場合があります。一方で、クレジット契約をした場合は販売会社とクレジット会社に同時にクーリングオフ通知を出す必要があるとする見解や、代金をクレジットカードで支払った場合は、クレジットカード会社にも同時に解約する旨を通知するよう推奨している情報も存在します。そのため、不明な点があれば消費生活センターに相談することが勧められます。
これを怠ると、スクールとの契約は解除されてもカード会社からの請求は止まらず、口座から引き落とされてしまう可能性があるためです。
カード会社への通知も、事業者と同様に書面で行うのが最も確実です。
通知書には、事業者へ送付したものと同じ内容を記載し、カード会社名、会員番号などを追記します。
この手続きによって、カード会社は事業者への支払いを停止し、すでに支払いが完了している場合には返金処理を進めることになります。
クーリングオフが適用されない!主な3つのケース
オンラインスクールの契約が必ずしもクーリングオフできるとは限りません。
法律で定められた条件に合致しない場合や、取引の形態によっては、クーリングオフ制度の適用対象外となります。
契約後に解約や返金を考えても、制度が利用できずトラブルになることもあります。
ここでは、オンライン講座の契約においてクーリングオフが適用されない代表的なケースを解説しますので、自身の契約が該当しないか確認することが重要です。
契約期間が2ヶ月以下または総額が5万円以下の場合
オンラインスクールがクーリングオフの対象となる「特定継続的役務提供」に該当するためには、期間と金額の両方の条件を満たす必要があります。
具体的には、契約期間が2ヶ月を超え、かつ契約総額が5万円を超える契約です。
したがって、例えば3ヶ月の講座でも料金が4万円であったり、料金が10万円でも期間が1ヶ月の短期集中講座であったりする場合は、この条件を満たさないため、原則としてクーリングオフの適用を受けられません。
契約を検討する際には、この2つの条件を必ず確認し、クーリングオフの対象となる契約なのかどうかを事前に把握しておくことが、後の返金トラブルを防ぐ上で重要です。
海外の事業者との契約で日本の法律が適用されない場合
クーリングオフ制度は、日本の「特定商取引法」という法律に基づいています。
そのため、契約したオンラインスクールの運営会社が海外の事業者である場合、日本の法律が適用されず、クーリングオフができない可能性があります。
契約書の利用規約などに、準拠法が外国の法律に定められていたり、裁判の管轄が海外の裁判所に指定されていたりすると、日本の消費者保護のルールを主張することが難しくなります。
近年増加している海外のオンラインサービスを利用する際は、事業者の所在地や利用規約の準拠法に関する項目を注意深く確認し、返金に関するリスクを理解した上で契約することが求められます。
通信販売に該当するとクーリングオフ対象外になるので注意
多くのオンライン講座は、消費者が自らの意思でインターネット上のウェブサイトを検索・閲覧し、申し込みを行う「通信販売」の形態に該当します。
通信販売は、訪問販売のような不意打ちの勧誘とは異なり、消費者が冷静に判断する時間があると見なされるため、法律上のクーリングオフ制度は原則として適用されません。
したがって、自分でウェブサイトから申し込んだオンライン講座は、基本的にクーリングオフの対象外となります。
ただし、事業者が独自に返品や返金のルール(返品特約)を定めている場合があり、その条件に従うことになります。
申し込み前にサイトの「特定商取引法に基づく表記」などを確認し、返金の可否や条件を必ず調べておく必要があります。
クーリングオフ期間が過ぎた・対象外だった場合の対処法
クーリングオフの期間である8日間を過ぎてしまった場合や、そもそも契約がクーリングオフの対象外だったとしても、解約や返金を諦める必要はありません。
契約内容や事業者の勧誘方法によっては、別の法律や制度を根拠に契約を解除できる可能性があります。
中途解約制度の利用や、消費者契約法に基づく契約の取り消しなど、状況に応じた対処法が存在します。
事業者との交渉が難しい場合は、専門機関に相談することも有効な手段です。
中途解約制度を利用して返金を求める
契約期間が2ヶ月を超え、総額が5万円を超える「特定継続的役務提供」に該当する契約であれば(エステティックや美容医療の場合は契約期間が1ヶ月を超え、総額が5万円を超えるもの)、クーリングオフ期間を過ぎた後でも、理由を問わず将来に向かって契約を解除できる「中途解約」が認められています。
中途解約の場合、すでに受講した分の費用と、法律で定められた上限額の解約料を支払う必要がありますが、残りの期間に相当する受講料については返金されます。
解約料の上限は、サービス提供開始前か後かによって異なり、また、サービスの種類によっても異なります。例えば、サービス開始後の解約料上限は、エステティックでは「2万円または契約残額の10%のいずれか低い額」と定められています。 美容医療、語学教室、パソコン教室では「5万円または契約残額の20%のいずれか低い額」が上限となります。
全額返金とはなりませんが、損害を最小限に抑えるための有効な手段です。
消費者契約法に基づいて契約の取り消しを主張する
事業者の勧誘方法に問題があった場合は、消費者契約法を根拠に契約の取り消しを主張できる可能性があります。
例えば、事業者が「この講座を受ければ絶対に月収50万円稼げる」といった事実と異なる情報で契約を誘ったり(不実告知)、将来の収益のような不確実な事柄について断定的な説明をしたり(断定的判断の提供)、あるいは「契約するまで帰さない」といった威圧的な勧誘を行ったりした場合がこれに該当します。
これらの不当な勧誘行為によって結ばれた契約は、後から取り消すことが可能です。
契約が取り消されると、契約は最初から無効であったと見なされ、支払った金額の全額返金を請求できます。
消費生活センターや弁護士など専門機関に相談する
事業者との交渉が個人では進まない、あるいは法律的な判断が難しいと感じた場合は、公的な専門機関に相談することが有効です。
全国どこからでも電話番号「188」でつながる消費生活センターでは、専門の相談員が無料で契約トラブルに関するアドバイスをしてくれるほか、必要に応じて事業者との間に入って交渉(あっせん)を行ってくれることもあります。
また、事業者の勧誘方法が悪質であったり、返金の金額で大きな争いになったりしているなど、法的な措置が必要と考えられる場合は、弁護士への相談も有力な選択肢です。
専門家の知見を借りることで、解決への道筋が見えてくることが期待されます。
契約前にチェック!オンラインスクールの返金トラブルを防ぐポイント
オンライン講座に関する返金トラブルを回避するためには、何よりも契約前の慎重な確認が不可欠です。
魅力的な広告や勧誘の言葉に惹かれて安易に契約してしまうと、後から解約したくてもできないという事態に陥りかねません。
契約書面の記載内容や、事業者独自の返金保証制度の有無とその条件など、事前にチェックしておくべきポイントがいくつかあります。
これらの点を押さえておくことで、安心して学習を開始でき、万が一の場合のリスクも軽減できます。
契約書面でクーリングオフに関する記載を確認する
特定商取引法が適用される契約の場合、事業者はクーリングオフ制度について記載した書面を消費者に交付する義務があります。
この書面は、赤字・赤枠で目立つように記載されていることが一般的です。
契約を結ぶ前に、クーリングオフの可否、手続きの方法、期間などが明確に書かれているかを必ず確認します。
もし、これらの記載がなかったり、内容が不十分であったりすると、法律で定められた書面とは認められません。
また、「いかなる理由でも返金には応じません」といった、法律に反する不利な特約は無効となります。
書面の内容を隅々まで読み、少しでも疑問があれば契約前に解消しておくことが、返金トラブルの予防になります。
口頭での説明だけでなく書面の内容を重視する
勧誘の場面では、担当者から「いつでも簡単に辞められる」「すぐに元が取れる」といった、消費者に有利な条件が口頭で説明されることがあります。
しかし、こうした口約束は後から「言った、言わない」の水掛け論になりやすく、法的な証拠として認められないことがほとんどです。
契約において最も重要なのは、契約書や利用規約といった書面に記載されている内容です。
口頭での説明と書面の内容に違いがある場合は、書面の記述が優先されます。
どんなに魅力的な勧誘を受けても、その言葉をうのみにせず、必ず書面の内容を自分の目で確認し、すべて納得した上で契約手続きに進む姿勢が重要です。
スクール独自の返金保証制度も調べておく
法律で定められたクーリングオフ制度とは別に、オンラインスクールが独自に設けている「返金保証制度」も確認すべき重要なポイントです。
例えば、「受講内容に満足できなければ全額返金」「期間内に目標を達成できなければ返金」といった保証が提供されているオンライン講座もあります。
これは事業者側が受講生を増やすために設けている制度ですが、適用には細かい条件が設定されていることが大半です。
「指定された課題をすべて期限内に提出する」「動画の視聴率が90%以上であること」など、条件は様々です。
返金保証があるからと安易に契約せず、その適用条件まで詳しく確認し、自分が条件をクリアできるかを現実的に判断することが求められます。
まとめ
オンラインスクールの契約では、契約期間が2ヶ月を超え、総額が5万円を超える場合にクーリングオフが適用され、8日以内であれば無条件で解約と返金が可能です。
クーリングオフの対象外であったり期間を過ぎたりした場合でも、中途解約や、不当な勧誘に対する消費者契約法に基づく取り消しといった手段があります。
トラブルを未然に防ぐためには、契約前に書面でクーリングオフや返金の規定を確認し、口頭での勧誘内容だけでなく書面を重視することが不可欠です。
また、オンライン講座が独自に設ける返金保証制度についても、その適用条件を詳細に確認しておくべきです。
困ったときには消費生活センターなどの専門機関に相談することも有効な手段となります。

