副業の納期管理|守れる受注量の決め方と、遅れそうなときの連絡

副業の納期管理|守れる受注量の決め方と、遅れそうなときの連絡

副業で案件を回すようになると、多くの人が最初につまずくのが納期です。引き受けたときには余裕があるように見えたのに、気づけば締切の前日に手が止まっている。一度でも納期を遅らせた経験があると、次の依頼を受けるときに不安が残ります。

こうしたとき、自分の意志の弱さを疑ってしまう方は少なくありません。もっと早く着手していれば、もっと集中していれば、という反省が出てきます。しかし相談を受けていて感じるのは、原因は取り組む姿勢の側ではないということです。多くの場合、引き受けた時点ですでに無理のある設計になっています。

この記事では、本業と両立できる受注量の決め方と、遅延の兆候を早めに掴む方法、そして遅れそうなときの連絡の仕方を整理します。読み終えたときに、自分が守れる量の目安を持てている状態を目指します。

納期が崩れる原因は、たいてい2つに絞られる

納期が守れなくなる理由を挙げていけば、いくらでも出てきます。本業が忙しかった、相手の返事が遅かった、想定外の修正が入った。どれも事実ではあるのですが、繰り返し起きているものは限られています。

なお当メディアでは、本業と並行して複数の仕事を持つ働き方を「複業」と表記しています(詳しくは副業と複業の違いとは?キャリアアップのためのこれからの選択肢をご覧ください)。

納期が崩れる2つの引き金
  • 作業時間を短く見積もっている/経験の浅い領域ほど、そもそも見積もれない
  • 体力の限界を計算に入れていない/時間が空いていることと、作業できることは別

相談の場で聞く話を並べていくと、引き金はほぼ2つに集中します。作業にかかる時間を短く見積もっていること、そして体力の限界を計算に入れていないことです。この2つはどちらも、着手前の見立ての問題です。だから作業中にいくら頑張っても、埋め合わせが効きません。

3時間で終わるはずの作業が、8時間かかる

見積もりが外れるという現象は、経験の浅い領域ほど大きく出ます。頭の中では手順が浮かんでいるのに、実際に手を動かすと、想定していなかった工程が次々に現れます。

ここで押さえておきたいのは、これが怠慢の結果ではないという点です。作業時間を見積もるには、その作業を分解した経験が要ります。何にどれくらいかかるかを知らない状態では、そもそも正確に見積もることができません。情報がないために起きているのであって、気合いが足りないから外れるわけではないのです。

だから「次はもっと早めに始めよう」という反省は、あまり効きません。見積もりは外れるものとして、その前提で組んでおく方が現実的です。

対処はいくつかあります。ひとつは、自分が出した見積もりに係数をかけること。慣れない作業であれば、想定の2倍を見ておく程度で構いません。もうひとつは、初回の案件は実測を取る機会だと考えて受けることです。実際にかかった時間を記録しておけば、2件目以降の見積もりは格段に正確になります。

時間が空いていることと、作業できることは違う

そしてもう片方の引き金が、体力です。スケジュールを組むとき、多くの人は空いている時間を数えます。平日の夜に3時間、土日にそれぞれ5時間。合計すれば週に25時間ほど確保できる計算になります。

しかし実際には、その時間に作業できる状態であるとは限りません。本業を終えた後の夜、どれだけ頭が働くかは日によって違います。会議が続いた日、気を遣う場面が多かった日は、机に向かっても進みません。数日それが続くと、疲れが溜まって週末も動けなくなります。

この連載では、稼働条件を伝えるときに「守れる下限」で数字を出すという考え方をお伝えしてきました。同じ原則が、自分のスケジュールを組むときにも当てはまります。調子のいい日を基準にすると、崩れたときに取り返す余地がありません。

具体的には、平日の夜に毎日作業する前提を外すことです。週のうち動けない日が2日はあると見ておく。その前提で成立する量だけを引き受ける。これだけで、破綻の頻度はかなり下がります。

相手を待つ時間も、自分の期間に含まれている

見落とされやすい点が、もう一つあります。確認待ちや素材待ちの期間です。

こちらの作業が止まっていても、締切は動きません。相手からの返事を待つ日数を計算に入れずに組むと、その分だけ後ろが圧迫されます。受注後の打ち合わせで確認しておくべき項目については、要件を詰める段階を扱った回で整理しました。着手前に、相手側の作業がどこに入るかを把握しておくと、スケジュールの精度が上がります。

本業と両立できる受注量を決める

原因が見立ての側にあるなら、対処も着手前に置くのが筋になります。

生活の下限を先に引く

受注量を考えるとき、多くの人は空き時間から逆算します。しかし順序を変えた方がうまくいきます。先に、削ってはいけないものを確保しておくのです。

睡眠時間、家族と過ごす時間、体調を整えるための余白。これらを先に引いてから、残った時間で何ができるかを考えます。逆にすると、案件が入るたびに生活の方が削られ、続かなくなります。

複業は、短期間で成果を出す競争ではありません。数年単位で続けられるかどうかの方が、結果として得られるものは大きくなります。生活が壊れる量を引き受けている時点で、設計が間違っています。

同時に抱える件数の上限を決めておく

あわせて効くのが、同時進行できる件数に上限を設けることです。時間ではなく件数で管理します。

案件が2件から3件に増えると、作業時間が1.5倍になるだけでは済みません。連絡のやりとり、状況の把握、頭の切り替えといった負荷が加わります。それぞれの案件について「今どこまで進んでいるか」を覚えておく負荷は、件数に応じて重くなります。

複業を始めた段階であれば、同時に2件までを目安にしておくと安全です。慣れてきたら増やせばよく、最初から上限を高く設定する理由はありません。

上限を先に決めておく利点は、判断が速くなることにもあります。依頼が来たとき、受けるかどうかをその場で考え始めると、断る理由が見つからないまま引き受けてしまいます。すでに2件動いているなら受けない、と決めてあれば、迷う時間そのものが不要になります。

それから、案件ごとに締切が重なっていないかも見ておきます。件数が上限内でも、締切が同じ週に集まっていれば実質的な負荷は倍になります。引き受ける前に、手元の案件の締切日を並べて見ておくと、重なりに気づけます。

平日夜に分散するか、週末に集中するか

同じ作業量でも、どこに時間を置くかで続きやすさが変わります。どちらが良いとは一概に言えず、作業の性質と自分の生活によって向き不向きがあります。

平日の夜に分散する形は、1日あたりの負担が小さくなります。毎日少しずつ進むため、締切前に慌てる場面も減ります。一方で、まとまった思考を要する作業には向きません。前回どこまで考えたかを思い出すところから始まるため、細切れにするほど立ち上がりの時間が積み重なります。調べ物や単純作業のように、中断しても再開しやすい仕事に向いた形です。

週末に集中する形は、思考の連続性を保てます。構成を考える、方針を決めるといった作業は、まとめて時間を取った方が進みます。ただし、週末に予定が入った時点で計画が丸ごと崩れる弱さがあります。家族との予定や体調不良が重なると、その週は何も進みません。

現実的なのは、両方を役割で分ける形です。平日の夜は資料集めや下書きに充て、週末に構成や仕上げを持ってくる。こうしておくと、週末が潰れても平日の分は進んでおり、被害が限定されます。

バッファは、締切の直前ではなく手前に置く

余裕を持ったスケジュールを組んでいるつもりでも、実際には機能していないことがあります。バッファを置く場所が原因です。

よくあるのが、締切の前日を予備日にしておく形です。しかしこの置き方では、遅れが判明する時点が遅くなります。前日になって間に合わないと分かっても、相手に伝えるには遅すぎます。

有効なのは、締切の3日から4日前に「ここまでに終わっている状態」を自分用の期限として置くことです。この日を過ぎた時点で遅れが見えるため、まだ手が打てます。相手に連絡する時間も、作業を巻き取る時間も残っています。

量としては、見積もりの2割から3割を目安に置いておくと安心できます。慣れない領域であれば、それ以上に取っておいて構いません。バッファが余ったなら、早く納品すればよいだけです。

本業の繁忙期は、先に共有しておく

本業に月末や期末の山があるなら、その時期は稼働が落ちることを、あらかじめ相手に伝えておきます。面談の段階で伝えておくのが理想ですが、案件が始まってからでも遅くありません。

先に共有された繁忙期は、相手にとって計画に織り込める情報になります。一方、その時期になってから「今週は動けません」と言われると、相手には突然の変更として届きます。同じ事実でも、伝える時点によって扱いが変わります。

遅延の兆候は、思っているより早く出ている

納期に間に合わなくなるとき、多くの場合、直前まで気づかないわけではありません。振り返ると、もっと早い段階で兆候が出ています。

「間に合いそう」と感じた時点が、すでに危ない

これは相談の場でよく話すことですが、「まだ間に合う」と自分に言い聞かせている状態は、すでに黄色信号です。

余裕を持って進んでいるとき、人は間に合うかどうかを考えません。考えるまでもないからです。間に合うかどうかを意識し始めた時点で、余裕はすでに失われています。この感覚が出てきたら、一度手を止めて残りの作業量を数えた方が確実です。

締切から逆算するときに、見落とされやすい工程

スケジュールを組むとき、多くの人は主作業の時間だけを数えます。文章であれば書く時間、資料であれば作る時間です。しかし実際には、その前後に工程が付いています。

前に付くのは、着手までの準備です。過去の資料に目を通す、参考になるものを探す、方針を決める。手を動かし始める前のこの時間が、意外と長くかかります。

後ろに付くのは、見直しと調整です。書き終えた直後の状態は、たいてい人に渡せる品質になっていません。読み返して整える時間、指定された形式に合わせる時間、送付するための準備。これらを計算に入れていないと、完成したつもりの時点からさらに数時間が必要になります。

見落としやすいのは、この後ろ側です。作業が終わった瞬間に納品できると考えていると、その日のうちに送れず翌日にずれ込みます。1件ごとは小さなずれでも、締切が近いときには致命的になります。

進捗は、最小限だけ見える形にしておく

管理のための道具を用意する必要はありません。複業の規模であれば、作業を3つか4つに分けて、それぞれが終わったかどうかを記録するだけで足ります。

大事なのは、頭の中だけで進捗を持たないことです。頭の中の進捗は、実態より楽観的になります。書き出してみると、終わったつもりでいた工程が残っていることに気づきます。

分け方は粗くて構いません。構成を決める、本文を書く、見直す、といった程度で十分です。細かく分けすぎると、管理そのものが作業になってしまいます。

遅れそうなときは、どう連絡するか

それでも遅れが避けられないことはあります。このときの対応で、その後の関係が大きく変わります。

連絡は、気づいた時点ですぐに

最も重要なのが、伝えるタイミングです。ギリギリまで抱えないでください。

早く伝えるほど、相手には選択肢が残っています。公開日をずらす、他の作業を先に進める、社内の確認を後ろに回す。時間があれば打てる手がいくつもあります。ところが締切の直前に伝えられると、相手にできることはほとんどありません。

同じ遅延でも、相手が受ける損害の大きさが変わります。そして信頼を損なうのは、遅れたという事実よりも、それが遅れると知らされなかった時間の長さの方です。

言い出しにくい気持ちは分かります。しかし黙っている時間が長いほど、伝えたときの相手の困り方は大きくなります。

新しい着地見込みを、具体的に示す

「遅れそうです」だけでは、相手は動けません。いつまでに終わるのかが分からなければ、代わりの手配もできないためです。

「◯日の◯時までにお渡しします」と、新しい約束を提示します。ここで注意したいのは、再び楽観的な数字を出さないことです。焦っていると、少しでも早い日程を伝えたくなります。しかし二度目の約束を破ると、失うものは一度目の比ではありません。

ここでも、守れる下限で出します。確実に間に合う日程を提示し、それより早く終われば前倒しで渡せばよいのです。

できている部分を、先に渡す

実務上、最も効果があるのがこれです。完成を待たずに、できあがっている部分だけでも先に送ります。

相手は受け取った部分から確認を始められます。社内のレビューを回す、次の工程の準備をする、方向性のずれがないかを見る。こうした作業を並行して進められるため、全体の遅れが吸収されることがあります。

謝罪の言葉を尽くすよりも、相手の作業を止めないことの方が価値を持ちます。分割して渡せる性質の仕事であれば、この方法を優先してください。

文面は短く、対処を先に書く

連絡の文面は長くする必要がありません。むしろ、原因の説明が長い文面は逆効果になります。読む側が知りたいのは、事情ではなく、これからどうなるかだからです。

早い段階で気づいた場合であれば、次のような形になります。

「お世話になっております。◯◯の件、当初◯日納品の予定でしたが、想定より作業量が多く、◯日まで日程をいただけないでしょうか。現在◯割ほど完成しており、できている部分は本日中にお送りします。ご都合が合わない場合は、優先する範囲をご相談させてください。」

直前になってしまった場合も、書く順序は変わりません。

「お世話になっております。◯◯の件、明日の納品に間に合わない見込みとなりました。申し訳ありません。◯日の◯時までにお渡しします。現時点で完成している部分を先にお送りしますので、先にご確認いただける箇所があればお使いください。」

謝罪は必要ですが、それだけで終わらせないでください。事実、新しい見込み、渡せるもの。この3点が入っていれば、文面としては十分に機能します。

同じことを繰り返さないために

一度遅れたこと自体は、取り返しがつきます。信頼が損なわれるのは、同じ原因で二度三度と繰り返したときです。

原因を分けて記録する

遅れが起きたら、原因を書き留めておきます。分類は3つ程度で足ります。

  • 見積もりが甘かった/次回から係数をかければ改善する
  • 本業や私生活の割り込みがあった/バッファの取り方を変える
  • 体調が崩れた/そもそも引き受ける量を減らす

この分類が役に立つのは、対処が異なるためです。見積もりの問題であれば、次回から係数をかければ改善します。割り込みであれば、バッファの取り方を変える必要があります。体調であれば、そもそも引き受ける量を減らすしかありません。原因を分けずに「次は気をつける」とだけ考えると、同じことが起きます。

次の受注量に反映する

記録した内容は、次に依頼が来たときの判断材料になります。前回2件を同時に抱えて崩れたのであれば、次は1件に絞る。夜の作業が続かなかったのであれば、週末中心の案件を選ぶ。

そして、記録を見ても量が多すぎると分かったなら、引き受ける件数そのものを減らす判断が必要になります。納期を守るという話は、最終的にここへ行き着きます。どれだけ管理を工夫しても、入ってくる量が処理できる量を超えていれば、いずれ破綻するためです。

断ることは関係を切る行為ではなく、引き受けたものを守り切るための手段です。実際、期限を守り続けている人ほど、受けない判断を早い段階でしています。具体的な伝え方は、仕事の断り方を扱う回で解説します。

まとめ:納期は、着手前にほぼ決まっている

納期が守れないとき、作業中の努力で挽回しようとしても限界があります。原因の多くは、引き受けた時点の見立てにあるからです。

見積もりが外れるのも、体力が続かないのも、意志の問題ではありません。情報が足りないまま組んだ計画は、外れて当然です。であれば、外れる前提で設計しておく方が現実的です。

この記事の内容を、3つに整理します。

  • 受注量は動けない日を織り込んで決める/慣れない作業は見積もりに係数をかけ、初回は実測を取る機会と考える
  • 「まだ間に合う」と考え始めた時点で兆候は出ている/頭の中で進捗を持たず、簡単でも書き出しておく
  • 遅れそうなときは気づいた時点ですぐ連絡する/新しい着地見込みを具体的に示し、できている部分を先に渡す

今日できることがあるとすれば、いま抱えている案件について、残りの作業を書き出して時間を数えてみることです。頭の中の見積もりと、書き出した後の数字は、たいてい違います。その差が、今の余裕の実態です。

数えてみて足りないと分かったなら、それは早く気づけたということです。締切の前日に同じことに気づくより、はるかに良い状況にあります。打てる手が残っているうちに数える。納期管理でできることの多くは、この一点に集約されます。

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